第08話-4

三日目、四日目は何事もなく、平和に時間が過ぎていった

・・最も、ユニオンリバー事務所やS.G西安支部は一時大騒ぎになったが(汗)


リィズはスパイラルで暴走の後、泥酔状態でベッドに担ぎ込まれた

レオネは始終笑っていたという


一方でロディはばっちり「メイのお菓子」の御利益(?)を受けて、レイノスが壊れるという大惨事に見舞われていた


「・・お、オーバーホールしたばっかの銃が~!?」


詩亞はというと、寝ている間に「机に頭をぶつけた」くらいで済んだそうだ

・・しかし、お菓子を食べただけでこうなるとは・・

食べてそうなるのではなく、偶然が誘発されているとしたら、それはそれで恐ろしい話だが


一日がかりでおやっさんによりレイノスが修理され、ロディは再び事務所に戻ってきた

・・事務所にはネスと、シードと、セラと、メイと・・相変わらず何事もないようにお茶をすする詩亞がいた


「・・をい、お前はいつまでここに居座るつもりだ?」

「とりあえず10日間のデータを集めなくてはなりませんし、サクラ博士はこちらにいらっしゃいますし・・」


いつの間にか普通に会話できるようになっている所を見ると、どうもここの環境には順応したらしい

・・ロディは呆れた様子で、「勝手にしろ」とだけつぶやいた

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・・すでに5日目、しかし何もしないでいていいワケがない

ロディはメイ、セラ、ネスを連れて再び木星圏を訪れていた

・・ちなみにシードは回復したものの不調であるため、留守番しているという


「・・なんか、あの衛星揺らいで見えないか?」


前回来た時には気付かなかったが、なにやら空間が揺れているかのように見える

・・奥にある楕円状の衛星は、淡く、青く輝いて見えた


「ネス、確認できるか?」

「ええ・・・バリアの一種でしょうね・・それも、デストロイクラスの・・」

「そんなにご大層なモノ展開してるってのか?・・・ますます怪しいじゃねーか」


ロディの期待は、確信に変わろうとしていた

世の中の誰もが忘れているだろうが、この遺跡には何かがあるハズだ


「ブレードバッシャー、全兵装一斉射撃」

「了解です」


ネスの機体管制が働き、ブレード部分が開く

レールガン、ガトリングガン、レーザーガン、プラズマ砲・・全ての全てが一点を集中し、破壊しようとする


「ちっ・・やっぱ弾(金)の無駄遣いか・・」


毒づく彼の前には、何の変化もなく立ちふさがるバリア


「手っ取り早くワームマイン!!」

「了解!」


機体の周囲に展開したプラズマフィールドに、4つのビットが反応してフィールドを収束する

空間の歪みが、揺らいで見えるそのバリアに衝突し、青い輝きを木星・・いや、宇宙の全てを照らすように撒き散らした


「・・ビンゴ!一時的でしょうが、何とか突破できそうですよマスター!」

「だ、大丈夫・・?」

「大丈夫だ!」

「出られなくなっちゃったらどうするのさ、ロディ~」

「出られる!もう一回ワームマインかませば済む話だろうが!」


ブレードバッシャーはブレードを畳み、機体の向きを変える事でそのバリアに開いた穴から突入した

・・案の定、ブレードバッシャーが内部の衛星に辿り着く頃には穴などなかったように元通りになっていたが・・

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・・衛星の表面に降り立つゼファーとドーマ、そしてセラのギア「ユニバリス」

シュウがいつ作ったのかは不明だが、どうやらせっかくもらった「シュテル」のパーツはこちらに回されたらしい

小柄な機体で頭部にはネコの耳のような、可動式センサーが付いていた

尻尾のようなパーツもある事から、シュウの意図はやはり「ネコ型ロボット」で問題ないのだろう

・・というワケでロディの乗機は相変わらずちょこんとした、可愛らしいままの姿のゼファーだった(汗)


三機はブレードバッシャーを離れ、表面上を歩いて遺跡の入り口に立った


「・・ふぇぇぇ~・・また迷路みたいになってるんでしょ、この中~・・」

「今更グズるな、お前は・・第一な、俺は迷路なんか解くつもりはさらさらねーんだよ!!」


いつか月の遺跡でやったように、ゼファーはその短い右腕を精一杯に振り上げた

真っ直ぐ下を睨み、ぐぐっとかがみこむ


「うっしゃー!!!穴掘りだぁぁぁぁ!!!」


さすがパイロットがバカでシュウが改良した機体の組み合わせだけの事はある、ゼファーはもの凄い勢いで地下に潜行していく


「い・・いいのかなぁ~・・貴重な遺跡に大穴開けて・・」

「もうやっちゃったから仕方ないよ、それにボク簡単な方がいいし♪」


ドーマは、どうやらゼファーが掘り終わったらしいその穴に飛び込む

ユニバリスも躊躇していたが、確かに掘ってしまったものは仕方ない、とっとと後に続くのだった

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「・・現在深度7・・と」

「外から見たときより、結構深いんだね・・」


潜行していくにつれ、内部は複雑さを増しているように見える

・・ま、三人ともゼファーの掘った穴を落ちていくだけだから「ちらっ・・」と見て過ぎるだけだが(汗)


「深度いくつったっけ?・・・セラ、分かるか?」

「ええと・・確か14だったよ」

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・・深度14・・

そこには、若い女性が一人途方に暮れていた

・・脱出を試みても、外には出られない

脱出出来ても、おそらく地球へ戻る術がない・・・

誰かに連絡しようにも、通信途絶してかれこれ5日目・・・


コントロールパネルらしき物の前に座り込んで、その女性はため息をついた


「・・どうしたら外にこの事を伝えられるの・・?」


一刻も早く外に知らせなければならない、究極の大惨事・・・

・・しかし何もできない自分に、苛立ちはつのっていく


「ロディ、セラ・・」


傍らに置いてあったバッグからは、可愛い子供達・・兄妹の写真


「ゴメンね・・クリスマスには帰れるって言ったのに、そのクリスマスが・・」

『どっせーいッ!!!』


女性は、ぎょっと目を丸くした

目の前に、いきなり大きな腕が現れた・・降ってきたからである(汗)

よくよく全体に目をこらしてみると、それは5メートルほどの「ギア」

・・確か、自分と研究チームを遺跡に運んできたのもこういう物だったハズだ

驚いた彼女は、それが未知の物体のようにすら感じていた


『・・ここが深度14か?』

『うん・・?』


答えていた声が、天井の穴から顔を出しているギアのものだという事はすぐにわかった

・・しかし、そのネコのようなパーツを持つギアは、何故か彼女の姿を凝視していた


『お・・お母さん!?』

『?・・セラ、何を言ってるんだ??』


・・セラ!?


彼女が驚くのも無理はない、自分の娘の名前・・先ほどの写真の、妹の方

その娘の声が何故、あんなギアから聞こえてくるのか?


・・答えは、そのギアから本人が降りてきて、彼女に飛びついた事で一度保留された


「フィアさん・・お母さん・・やっと会えたぁ・・・・」

「・・セラ・・?」


・・「フィア」・・彼女は娘の姿を見て、感動以前に疑問を覚えた

・・確かこの娘の身長って、こんなくらい(手で計ってる)じゃなかったかしら??・・


「・・セラ、あなたたった5日で随分と大きくなっちゃったわね・・(汗)」

「・・・え?」


ぼろぼろと涙を流して喜んでいたセラも、一瞬きょとんとした顔になる

・・そういえば、かく言う母の容姿は全然変わっていないように見える


「・・ッ・・・母さん!!!」


今度は男の声・・少年の声ではなく、青年の、はっきりした声だ

自分の背よりも高いその青年は、眼鏡を外すと「フィア」に抱きついてくる


「・・探したんだ・・・10年も・・・・」

「????・・・・」


・・「フィア」は二人を一度ぐい、と押しのけて言い聞かせた


「ちょっと待って・・10年?」

「そ、そうだよ?・・・お兄ちゃんが10年探しても全然お母さんの情報が見つからなくて・・」

「私がここに閉じこめられて、まだ5日のハズよ?」

「・・・・・・・はい??」


ロディとセラは同時に口に出していた

フィアも兄妹も、揃って首を傾げている

かたや成長した兄妹、かたや年をとっていない母


「・・ってそんな事はどっちでもいいの!!(自分にツッコミ)」

「お母さん~っ!!・・・会いたかった・・会いたかったよぉ・・・」

「・・・・」


疑問が晴れたワケではなかった

だが・・血はつながっていなくとも、最愛の子供達を忘れる事などあり得ない

フィアは何も言わず、二人を抱きしめた


『・・・よかったね、ロディ』


メイは小さくつぶやいて、自分の祖父を思い出して・・少しだけ涙ぐんだ


ロディが最大の目的・・イヤ、唯一の目的としていた母の捜索

ユニオンリバーの真の目的であったそれは、今まさに達成されたのだった

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「・・よかったですね、マスター、セラ様」

『ありがとうな、ネス』


ロディは今までに見せたこともないほど、少年のように純真に微笑んでいた

ネスはその言葉に感動し、涙した(目・・モニター上ではあるが)


『・・で、ネス!・・問題はこっからだ!!』

「はい・・・?」



ロディは突然、真面目な顔になったかと思うと話し始めた


『母さんの話と今回の件で、空白の10日間の「意味」と「結論」がわかったんだよ』

「ほ、ホントですか!?」

あと5日で世界は崩壊する』


ネスは絶句、話を今初めて聞いたメイも黙り込み・・・

フィアがロディの代わりに、その説明を始めた


『初めまして、ネス』

「あや、初めまして・・フィア=スタンフォード様」

『よろしくね~♪・・っと、いきなり説明なんかで悪いけど・・あと2~3日の後から、宇宙中で大異変が起きる事になるわ』


フィアは「遺跡」からロードしたらしい地図などのデータをブレードバッシャーに送ってよこした

・・地図は宇宙の航路図らしきもの、そして詳細データは恐ろしい文章で綴られていた


「・・コレは・・遺跡のある場所?」

『そう、私がこの遺跡でデータを集めていた時に発見したものよ』

「全ての遺跡のガーディアンが一斉蜂起・・破壊の限りを尽くした後に自己オーバーロードで・・惑星消滅・・・」


・・全ての惑星・付近に遺跡がある以上・・・宇宙から星の光が全て消える事になる・・

ネスは息をのんだ

・・そして、それ以上に・・ロディ、セラの落胆が感じられた


『・・・母さんに会えたと思ったら、こんなシナリオが用意されてたなんてな』

『お兄ちゃん、どうするの?』

「と・・・とにかく、一度戻ってください皆様」

『データは全部回収した・・・・急いで戻ってシュウとサクラに解析してもらうのが得策だろうな』


ロディは母との再会による感動、空白の10日間の正体を知った驚き、これから起きるという災厄の絶望・・

全てを受けて、本当に今までにない、難しい顔をしながらゼファーに乗り、ブレードバッシャーへ帰還した

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そのころ・・


「詩亞はん」

「はいはい」

「・・遊ばれとるンとちゃうか・・・?」


シードは段々趣味の色が強くなっていく、詩亞の服装・・コスプレにも近いそれにツッコミを入れていた

着替えを持ってきていないから、とサクラが貸してくれたものを着ていたのだが・・

・・いよいよ、とんでもない服装になっている

ちなみに現在は何故か巫女装束。


「悪い事は言わんが・・ぜったい遊ばれてはるわ、あんさん」

「そ、そうなんでしょうか・・・?」

そうこう言っている間にまたサクラがやってきて、とっとと次の衣装を着せて去っていった(汗)

・・着せ替え人形のように遊ばれている詩亞も詩亞だが、異常の原因を調べているハズのサクラもどういうつもりなのか・・


・・その間にロディ達はバリアを突破、木星圏を無事に抜け・・一路、ユニオン事務所への航路を急いでいた


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